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電子書籍ガイド(社会と自分のための)

電子書籍元年」は終わるのか

「これから普及する」と何度も言われながら、国内ではまだ認知度が低い電子書籍。2010年は「電子書籍元年」と呼ばれ、電子書籍への理解は少しずつ広がっていますが、爆発的な電子書籍ブームは、いまだ訪れていないようです。 

電子書籍を普及させよう」という動きは、電子書籍を出版している著者の方々や、新たに事業を作ろうとしているみなさんの間では常に活発であるものの、既存の出版業界にはその動きがなかなか波及していないのが現状かと思います。

その状況から、「出版業界が電子書籍の普及を妨害している」といった主張も一部にはありますが、実情はそう単純ではないと感じます。

というのも、「紙書籍を好んでいる」のは何も出版業界に関わる方々だけではなく、読者の方々の意向でもあると感じるからです。

自分自身、電子書籍を出版・販売する中で、友人に「やっぱり本は紙で読みたい」と伝えられることが度々ありました。

それと同時に聞こえてきたのが、

「専用のタブレットを買わないと、電子書籍って読めないんだよね?」

という声です。

電子書籍は専用の端末がないと読めない」という誤解は多くの方が抱いており、紙への愛着に加え、こういったいくつかの誤解も、電子書籍が普及していかないひとつの要因になっているのではと感じました。

そこで今回は「電子書籍ってそもそも何なの?」という話から「実際に電子書籍を購読するのに役立つ情報」「電子書籍の未来」といったお話をしていこうと思います。

 

そもそも電子書籍って何よ  

 ウィキペディアの「電子書籍」の項目には、「……金属、樹脂、磁性体等の素材に、電磁的、または、レーザー光等で記録した情報」云々といった形で電子書籍の定義が非常に厳密かつ難解に説明されているのですが、大変分かりづらいので、ここではより簡潔な言葉で電子書籍をご紹介します。

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電子書籍は、大まかに言えば「インターネット上で配信されている、デジタルファイル化された読み物系コンテンツ」の総称です。

名前に「書籍」とある通り、情報はページごとに分かれており、タッチすることでそのページがめくられていく仕様が主流です。

 電子書籍をダウンロードできるプラットフォームは複数ありますが、MMD研究所が行なった「2016年電子書籍に関する利用実態調査」(2016年3月調査)によれば、利用率1位は大手通販サイトAmazonが提供する「Kindleストア」で、その利用率は全体の45%にのぼるということです。2位は楽天が運営する「楽天Kobo」(27.6%)、3位にはAppleが運営する「iBooks」(17.9%)と続きます。

 インプレスR&Dの調査では、2013年頃にはKindleの利用率は50%を超えていたため、電子書籍業界の勢力図は少しずつ変化してきていると感じます。今回の記事では、この利用率を前提に、電子書籍ユーザーの半数近くに使用されているKindleの解説を中心にしながら、他の電子書籍についても少し触れていこうと思います。(僕自身がKindleで書籍を出版しているため、Kindle寄りの解説が厚くなることをご了承ください)

 

スマートフォンタブレットがあれば、電子書籍はだれでも読める!

はじめにも触れましたが、電子書籍を敬遠している方々が抱いている誤解のひとつが「電子書籍は専用端末を新たに購入しないと読むことができない」というものです。

これは、電子書籍を専用端末で読みながら、街角で「読みやすい!」を連呼していた「Kindle」のTVCMの影響が少なからずあるんじゃなかろうかと個人的には思っているのですが、実際は、専用端末がなくとも、電子書籍は読むことができます。

 まず、混乱を招きやすい「Kindle」という単語について解説いたします。「Kindle」という単語は大きく分けて2つの意味で使われます。

 ひとつは、世界的な通販サイトAmazon」が販売する「電子書籍リーダー」としての意味です。先述したKindleのTVCMでは、この意味で「Kindle」という言葉が使われています。

もうひとつは、Amazon」が提供する「電子書籍販売サービス」としての意味です。Amazonは、電子書籍を購入・出版できるプラットフォームを自社で用意しており、その販売スペースをKindleストア」、そこで公開している販売ランキングをKindleランキング」と呼んでいます。 

そしてAmazonは「Kindleストア」で購入した電子書籍を、スマートフォンタブレットで簡単に読むことができるよう、Kindleアプリ」を無料で提供しており、このアプリをダウンロードすることで、専用端末を持っていなくとも、「Kindleストア」で販売されている電子書籍が読めるになります。

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Kindleアプリをスマートフォンタブレットでダウンロードし、Kindleストアで電子書籍を購入する」という方法が、現在、電子書籍を読みはじめる上で最も「手軽な第一歩」ではないか、と僕自身は考えています。

 

電子書籍と購入手段

幅広い年齢層の方がKindle電子書籍を購入する際に、

ハードルだと感じたもののひとつが、「購入手段」です。

通販サイト「Amazon」では、通常の商品を購入する際には「代引き」による現金決済が可能ですが、電子データである電子書籍を購入する際には、「代引き」の手続きが行えません。

AmazonKindleストアで電子書籍を購入する際に利用できる手段は2つで、

1つは「クレジットカード決済」

もう1つがAmazonギフト券による支払い」です。

クレジットカードをお持ちで、その利用にも不安のない方は問題なく電子書籍を購入することができるのですが、なかにはクレジットカードをお持ちでない方や、利用が不安だという方もおられるかもしれません。

そういった方々にとって嬉しい存在が、Amazonギフト券です。

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このギフト券はコンビニエンスストア等で購入でき、裏に記入されているコードを入力することで、Amazonで利用できるポイントを手に入れることができます。

iTunesカードなどと手続きは全く一緒です)

このギフト券をコンビニ等で購入し、ポイントを登録することで、簡単にKindle電子書籍が購入できるようになります。

僕自身、クレジットカードの「無限に購入できてしまいそうな感覚」が苦手なので、普段は「この金額だけ本を買おう」と決めたうえで「Amazonギフト券」を購入してKindle電子書籍を購入するのが習慣になっています。

 

「店舗で電子書籍を売る」実験

「そうは言っても、実物がないものを購入するのは不安だ」という声もあるかもしれません。そういった方々の声には、「楽天Kobo」と「BookLive」の協力で実験的に開始されているサービス「Booca(ブッカ)」が将来、応えてくれる可能性があります。

Boocaは「電子書籍を書店店頭で陳列し、購入することができる電子書籍カードおよびサービス」の愛称です。 

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図のように、本棚に似た形式で書店の一角にカードが陳列され、このカードを購入することで、当該タイトルの電子書籍を、提携する電子書籍配信サイトからダウンロードして読むことができます。2014年6月16日から11月21日まで、三省堂書店神保町本店などで実証事業が行われ、この実証事業の結果次第では、全国の書店に「電子書籍カード」が並ぶ未来がやってくるかもしれません。

一般社団法人日本出版インフラセンターによる実証事業の総括はこちらで読むことができます)

 

電子書籍が「紙と変わらない」?

電子書籍を語る際には、常にそれを読む「端末」が話題になります。

ご紹介したように、アプリをダウンロードすることで、みなさんがお持ちのタブレットスマートフォンでも読める電子書籍があるのですが、「液晶画面で長時間文字を読みたくない」といったご意見もあります。

電子書籍業界では、この「液晶画面での文字の読みにくさ」を大きな問題として捉え、その解決のために力を注いできました。ここで、先ほどご紹介した「Kindle」の電子書籍リーダーにお話を戻します。

CMでも話題になっていた電子書籍リーダーKindle Paper White」は、読書感覚を紙に近づけるため、「フロントライト方式」を採用しています。

 テレビをはじめ、これまでの液晶画面は「バックライト方式」と呼ばれる形式を採用しており、これは簡単に言えば「目に向かって、直接光を放つことで映像を見せる」形式です。

この方式にも一定のメリットがあり、それは、「人の感情を揺さぶりやすい」ということです。常に光が目に向かってくることで、受け手は強い刺激を受けるのですが、これは「文章を読む」という目的とは一致しない特徴でもあります。

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フロント・ライト方式とは、「ライトガイド(図の第1層)から発せられる光を、一旦、文字が記載されたPaperWhiteディスプレイ(図の第3層)の方向へと放ち、ここで反射された光がユーザーの目に映る」という形式で、この方式では、「明かりの下で紙の本を読む」のと非常に近い感覚を得ることができます。このような技術によって、電子書籍を読む感覚は、紙書籍を読む感覚へと近づいてきています。


おわりに

ここまで、電子書籍に関する様々な情報をご紹介してきましたが、僕は「紙書籍の時代は終わり、電子書籍の時代が来るんだ!」といったことを主張するつもりは全くありません。

まだまだ普及率は低いですが、電子書籍を読む人が増えることは、作家にとっても、読書愛好家にとっても、嬉しいことなのではと思います。

僕自身は、電子書籍を利用するようになったことで、保有できる本の数が増えたり、長編小説をどこにでも持ち歩き、読むことができるようになりました。

ただふと、辞書のようにずっしりと重い書籍を手にとり、その書籍と二人きりで、ゆっくりと時間を過ごしたいと思うこともあります(『ハーモニー』のミァハの影響を強く受けていることを白状します)。

 

電子書籍は、本を愛する人々が新たに得られた「選択肢」なのだと思います。

あくまで選択肢ですから、この存在を読書家や作家が敵にするのも味方にするのも、自分たちの考え方ひとつなのでは、と考えています。

この記事が、その選択肢の存在を知っていただき、そこへ進むためのちょっとしたガイドラインになれば幸いです。

 

P.S.

(末尾に、先週出版した拙著のリンクを貼らせていただきます。

名前が物騒ですが、電子書籍を試しに読む際の実験台にしてもらえばと思います) 

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